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いろいろ感動のジャズバード

2008.04.04

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最近どうも日記を書く暇がない。おさぼりしまくりだが元気だったりします。昨夜は久しぶりに表参道のジャズバードの北條直彦トリオにお邪魔。

メールでお誘いをうけたのだが、1時間前についてみるとテナーを吹いてるおじさんがいる。聴くと僕もメールでお誘いを受けたという。サックス用のマイクや譜面台を几帳面にセッティングし終えていた。

それでわたしはフルートを取り出し、店の方にマイクを借りてPAチェック。すると彼が店の人からガムテープを借りてきた。何かとおもったらわたしが背が高いので、こわれた譜面台をわたしの高さに調節するために気を回してくれたのだ。

それから隣に座った彼と雑談モードに突入。じゃあ名刺をと差し上げると、彼も名刺をくれた。その名刺をみて、あ、と叫んでしまった。

中川昌巳さんではないか。彼は芸大フルート科で、現代音楽フルート奏法の大家といわれた人で、武満徹が彼のために作曲した現代音楽の曲があるほどだ。ジャズのアルバムもリッチーバイラークとレコーディングしていたりする。

じつは、わたし子供のころ、彼とピアノの佐藤允彦のデュオライブをおっかけまわしていたことがあるんだが、お顔の印象がだいぶ変わっていて、名刺を見るまで彼とわからなかった。

その彼がフルートはやめたという。へー。どうして?というと、フルート大嫌いという。へー。わたしの楽器をタポタポさわりながら、もうヤマハの一番安いフルートしか持ってないし。へーまじに? それでテナーばっかり吹いているという。どうも彼は、わたしがご近所のマリーに入り浸るように、この店に入り浸ってテナーを吹いてるらしい。

その彼のテナーが恐ろしく早弾きだ。フルートから持ち替えると早弾きしたくなるのかねー。でも彼のフルートは早弾きではなく、七変化する音色とか、ハーモニクスとか、どっから音がでてるのというフルート奏法なので、かなり意外なのだが、フルート大嫌いという彼の心情、じつはわたし大共感。

フルートじゃなくて、ジャズがやりたいんだよねー、という感じ。フルートだとジャズより前に、フルートの音色の限界とかをやらないと、フルート的にすごくないことになっている。だがそんなことよりジャズしたいのよ、という中川さんの本音が聞けて嬉しくなってきた。そうそうわたしもフルートがしたいのではなく、ジャズがしたいだけだから。

ところが、わたしがフルートを出すと彼は一応出してあったフルートケースをバッグに閉まってしまった。おまけにステージの一番かぶりつきに彼が陣取っている。そのために世界的フルート奏者のかぶりつきで、演奏するはめになった。いやーエキサイティングというか、やりづらいったらありゃしない。ジャズ魂ならよいが、彼のフルート奏法を知ってるだけに、どうも集中できないw

彼は、譜面を一杯もっている、みるとベサメムーチョとかリードシートだ。譜面がないとふけないのだという。それで譜面台譜面台という。わたしも曲をもっていったが、もうこうなったらユードントノーしかないな、というので、北條さんとしっとりと演奏したのであった。

そのほか、ジェイクさんが超絶モダンクラを披露。いやーすばらしい。北條さんによると、スタジオミュージシャンで、むかしナベサダが吹けない難しいところを、すべて彼が吹いていたという逸話の持ち主で、テクニックと歌心が天下一品だった。

ベースはマイミクのyutakaさん、そしてドラムが植松さんだ。

去年、江ノ島花火の日の直後に病気を宣告された植松さんが健在だった。しかし、医者からは3ヶ月といわれてると、あっけらかんといって、私の手をとり、胸をさわらせた。チューブらしきものが埋まっているのだが、彼はまだまだ人生を楽しみたくてしようがないようにみえた。

終電の関係で2セットで帰ってきたが、最後の彼のドラムソロが、俺はまだ生きてジャズを楽しみたいんだ、という心からの叫びにきこえて、感動した。

店を出ると、ブレイク中の植松さんが店の外でコーラ片手に佇んでいた。そしてわたしの手をぎゅっと握り、僕はまだジャズがやりたい。来月5度目の手術だけど、また必ず帰ってくるからまた一緒にやろう、と握った手を離さない。彼の手のぬくもりが終電車の中で消えなかった。