昨夜は横浜は関内のエアジンで、板倉克征氏のピアノソロライブに遊びに行ってきた。
板倉氏は、フリージャズのヴァーチオーゾ。彼によると、インサイドピアノとか、いわゆる現代音楽のアヴァンギャルドな奏法はもう古いという。
楽器持って遊びにおいでよ、と何度か電話をいただいたので、あの焼肉臭の漂う急な階段を上り詰めてエアジンへ。
エアジンといえば偶然なのだが、今日家を出る前にメールチェックをしたら、先日エアジンでプレーさせていただいた北條直彦氏よりメール。
フルートの現代音楽奏法の記譜法とジャズでの拡張奏法の可能性について教えてほしいので、わざわざ私のほうに出向くとかいっているのだが・・・・。
北條さんといえば、ジャズピアノも超一流なのだが、芸大作曲家出身で現代音楽の作曲家としても定評がある。
エアジンで、マスターや板倉さんにこの話を振ってみた。というのは、現代音楽の奏法は、記譜がある意味不可能だ。ましてフリーとなると、記譜する意味がない。
現代奏法を完璧にこなし、しかもジャズをやるのは、世界的にみて中川昌三さんしかいない。マスターによるとエアジンにもよく遊びにくるが、私のほうがジャージーだという。
さらに、中川は武満徹のおかかえで、武満は中川のために記譜していた。つまり拡張的な奏法は、固有のプレーヤーを前提にしてしか記譜法が存在できないのだ。北條氏が、私というプレーヤーを前提に記譜法を開発したいといってきているのには、私も驚きだ。
まあこんな話でもりあがる前に、演奏も盛り上がった。板倉さんは今日は半分以上スタンダードをやっている。ところが私が入るといきなりフリーをけしかけてくる。これが楽しい(まあ聞いているほうはどうかしらんが)。
板倉さんが、あいつは上手いという、ドラムの龍さんと、中央線方面でいつも俊龍劇画というデュオをやっているというフリージャズのペットの増子さんがたたずんでいる。いやほんと佇んでいるのだ。
彼は、食べないし寝ないという。今日も一週間寝てないという。彼のペットのケースはやたらでかいのだが、中には猫缶とマタタビ。野良猫とじゃれるのが趣味だという。
板倉さんの演奏中、そして私の演奏中、彼は伏せて寝てしまう。ところが真剣に音に意識を飛ばしているらしい。不思議な男だ。フルートは、なかなかいないから遊んでという。
彼は邪魔しないといって、ステージの私の後ろの椅子に座って、ただペットでゆらめいている(♪)。
http://www.sunamajiri.com/live/20070607_2_1.mp3
そっからころんで、いつのまにかユードントノーに聴こえてしまうギグ(♪)を。板倉さんと「いやー変態!」と握手。フリーって癖になるから怖い。
http://www.sunamajiri.com/live/20070607_2_2.mp3
エアジンのマスターによると、フルートは、しっかりしたピアノトリオさえつれてくれば、サウンドになる。ある意味、フルート奏者の役目はピアノトリオを育てることだ。エアジンによく出る小宅珠実も結局そうだという(彼女の場合、ラテンにとんずらしないのは、オリジナルが売りだかららしい)。
あとはジャズ語で飛ばせるかどうかだ。たしかにそのとおりで、フルートはブラス(ペットやサックス)と違い、リズムを引っ張ろうとしても飛んでるだけになりがちなのだ。なら飛んでしまえ。
私がエリックドルフィーは、フルートで曲をガツンと始められる唯一のジャズフルートだというと、マスターが、ドルフィーほど世の中に恨みつらみで演奏したやつもいない、ブッカーリトルみたいにド下手だ、とか話が飛んでしまった。
ちなみに、板倉さんに、自宅でスタンダードを弾くこともあるのかと訊くと、疲れるとスタンダードを一人で演奏するという。疲れるとは音探しをひたすらやっているという意味だそうだ。きっと一日中ピアノをさわっているのだろう。前は二台のグランドが自宅にあってひたすらさわってたらしい。すげえな。