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Jazz Flutism ジャズフルーティズム 大本薫ジャズフルート教室

フルートの可能性やフルートとしての上手さのことをFlutism(フルーティズム)といいます。それは、完成されたフルートの世界観のようなものです。

フルートは、サックスなどと異なり、圧倒的にクラシックが多数派の楽器であり、フルートの音色といったら、Classic Flutismで確立された、最上級のフルート楽曲やフルート演奏のことだ、と無条件になってしまいます。

しかし、フルート音楽の外では、音楽は激動期を経験しました。20世紀は音楽に限らずあらゆることが激動し、音楽も西欧音楽がクラシック(古典)になってしまうほどでした

その中で、Flutismだけが古典のままであるというのは、あまり自然な姿とはいえません。これからお話しする、Jazz Flutismは、20世紀最大の音楽の発明であるジャズの側から、Flutismを捉えようという世界観です。

Jazz Flutismを一言でいうなら、フルートの自然回帰、といってよいと思います。


Jazz Flutism Title


ジャズの「異者」

放っておくとジャズから掛け離れていく楽器、それがフルートです。フルートを真剣に吹いたことがある方ならどなたでも実感をもつと思います。

これはフルートが、元来の「ジャズ楽器」ではないという理由
(注1)の他、フルート音楽の多数派であるクラシックのフルート奏法(Flutism)が、ジャズの要求と相性が悪いためです。

そもそも笛の音は、西欧音楽にとっても「異物」でした。ヨーロッパ音楽は、ロマン主義の行き詰りを経験し、メシアン以降、現代音楽というジャンルを生成しますが、この現代音楽は、まさしく笛の音で終結せざるを得ませんでした。

これは、笛の音がいわゆる「音楽」にとっての「異物」や「異界」だったことの証左です。音楽と厳しく対立する音、ないしは効果音・・・。

  注1 トラッドジャズだけでなく、スイングやモダン黎明期にも、フルートはソロ楽器・アンサンブル楽器として必要とされなかった。


メロディーの自然回帰とフルート

この笛の音の素顔に無自覚になると、Classic Flutismは、ロマン派メロディーの大仰な誇張表現だけになってしまいます。それはもはや音楽の中断のようなものです。

それに対して、モダンジャズは正反対の方向を向いています。

徴兵を免れたNYのミュージシャンが、商業音楽のアフターアワーに、自分たちのためにセッションをしていて突然変異した、モダンジャズのPhrasiology(フレージング)は、ロマン派的なメロディー表現の解体そのものでした。それはちょうどロマン派的な強調の打消し、ないしは反転のようにも感じられます。

たとえば、フレーズの歌い出しのアーフタクトでビートを捉えれば、歌い出されたフレーズには最大限の自由が生まれるものです。もちろん、それは前打音をはじめとした、ヨーロッパ音楽の装飾音とは、まったく異なった音楽的な意味があります。

ジャズは、テンポルバートでさえ、ビートが明快で、音楽を中断させたりしないでしょう。

ヨーロッパ音楽はロマン主義で、メロディー表現の頂点を極めますが、そうした人為的なメロディーに対して、まさにジャズはメロディーの自然回帰でしょう。しかし依然としてFlutismだけがそれに逆行してしまう

だからフルートは、より極端に「音楽」のアウトサイダー(異者)になってしまうのです。これがジャズフルートの難しさの原因でした。



ジャズはフルートで開放された。

西欧音楽の成れの果ての現代音楽が、笛の音で終結してしまったように、じつはジャズでも同じことが起こりました。

モダンジャズは、1960年代に一旦飽和状態を迎えます。その時、その混沌から抜け出すために多用されたのがフルートだったのです。これがジャズにおけるフルートの本当の始まりでした。

音楽が行き詰まると、笛の音で打破するしかない。しかし、そもそもジャズはロマン派的表現の解体、つまり自然回帰でした。そのため、現代音楽がフルートで終結したのとは対照的に、ジャズはフルートで次の時代に押し上げられた、といっても過言ではないでしょう。

他の楽器と違って、音楽そのもののカウンターパートになってしまうフルートだからこそもつ力。それを度外視して、ジャズフルートを学ぶことはできないのです。



ジャズの曲を吹くのがジャズフルートではない

ジャズの曲をやればジャズになるのではないように、基本からジャズ音楽を捉えなければ、Jazz Flutismを身につけることはできません。なぜジャズがメロディーを自然回帰できたのか。その辻褄を理解しようとせず、闇雲にジャズでフルートを吹くことは許されないのです。そういうフルートをジャズは受け付けないでしょう。

このようにClassic FlutismとJazz Flutismには、根深い奏法上の差異があります。それは、音楽の摂理にとって、笛の音のもつ特性がもたらす大きな違いなのです。これを克服するためには、Jazz Flutismを1から学ばなければなりません。



フルート初心者の方こそ

そして、これからフルートをはじめるというフルート初心者の方こそ、自然にフルートの自由を手に入れるJazz Flutismをメソッドとすべきです。

従来のメソッドのように音楽の幅を狭めませんし、簡単に音楽の仕組みを体感できるようになります。理想的なフルートマスター法といえるでしょう。




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